高校野球「裏」ビジネス

2008-06-30-Mon-22:18
高校野球における野球特待生問題は、高野連が有識者会議の答申を受け入れ「特待生は各学年5名以下が望ましい」などとする運用基準を発表し、ひとまずの決着を見たように思える。

だが、この問題が起きた発端、そしてこの問題の根本にある構造的な問題については、何も解明されていないし、改められたとも思えない。

本書の出発点はそこにある。

高校野球「裏」ビジネス (ちくま新書 711)


野球留学自体が悪いわけではない。経営努力として、特待生を集めて野球部の強化に走る私学が悪者のように言われるのも何かおかしい。

そもそも、プロ側が入団への見返りとして特定の選手に栄養費を渡したり、指導者に裏金を流すことが問題だったはずなのに、なぜ野球留学や特待生が悪とされたのか。

そこの部分にボタンの掛け違いというか、高野連の現状認識の甘さと対応のまずさを感じたものだが、本書を良く読むと、必ずしも高野連は暗愚だったわけではないことが分かる。

つまり、早い話が高野連もいわゆる「野球ゴロ」を一掃したいとは思っていたということだ。

ただ、単に矛先を私学側に向けた対応を取ったために、特待生問題は混乱というか、論点がはっきりしないまま推移したように思える。

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本書はそこにある程度踏み込んで、はっきりとは明言してはいないものの、悪いのは関西のボーイズリーグにおいて暗躍してきた「ブローカー」の存在だと言いたいということが、読み終わると分かるようになっている。

そして、誰とは書いていないがブローカーを名乗る人物は元プロで引退後に食い詰めている人間たちだと。

タテ社会という野球界全体の人間関係を利用し、巧妙に貸し借り関係を築いていく。具体的な手法については第8章を読んで欲しい。「ボール」の話はさもありなんと頷かされた。

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関西地区が選手供給源となって、九州や東北の私学が受け入れ先として生徒が流れていく。「野球留学」「特待生問題」とは大ざっぱに言うとこういう図式のことだ。

そこで暗躍するブローカー行為は確かに悪だが、ブローカーだけを責めても問題の解決にはならない。彼らだって需要があってやっているわけだから。

一つには、どんな手段を使っても野球部が強くなって学校の知名度が上がればそれでよしとする私学側の風潮が問題。経営努力だと言われればそれまでかも知れないが、例えば同じ東北地方、青森県内の私学とはいっても、青森山田と光星学院のやっていることを「経営努力」として同列化して語るのは無理があると思う。

もう一つは、教育を「投資」と考える親の風潮。

確かに野球はカネがかかる。だから私学まで通わせて野球を続けさせるには経済的事情が許さないという話は分かる。その意味で、特待生という制度は必要だとも。

ただ、世の中には子どもを投資の対象と考えて、教育にかけた金を回収しないと損、あるいは回収するのが当たり前と考える親がいるのも事実のようだ。

俺が問いたいのは、果たして教育は投資なのかということ。投資っていうのは、投下した資本(カネ)に利益を乗っけて回収するってことだけど、教育っていうのは本来、親から見返りを期待せずに与えるものじゃないのかと。

ガキの経歴に「甲子園出場」という一文が加わるとハクがつくとかいうアホな発想を持つ親が、ブローカーに言われるままにほいほいカネを渡すんだと思う。甲子園行くのなんてそんなに甘くねえし、だいいち甲子園出たくらいでハクなんてつかねえよアホか。

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この特待生問題を本当に解決するなら、全てを白日の下に晒す必要があると思うが、現実的には各方面に影響が大きすぎてそれは不可能だと思う。

だからせめて、今、全てを話すなら過去の所業は全て不問に付すと。だから正直に話せと。これを条件にするしかないと思う。

カネの流れについては、変に蓋をするから「ウラ」に流れるのであって、プロから社会人、大学。社会人、大学から高校。高校からクラブチームや中学に対して、選手獲得の見返りとして「選手育成金」という名目の運営費を、堂々と支払う仕組みを作るのがいいと思う。

ボールやバット、グラブにスパイクにユニフォームと、野球部の運営にはカネがかかるという現実にきちんと対処すべきだと思う。

最後に、ボーイズにも、私学の高校にもまともな指導者はたくさんいる。そのことが本書を読んで分かった。あと、もし自分が親なら「人間を作る」という考えを持った指導者の下で子どもには野球をやらせたい。

矛盾するようだが、甲子園なんてのは二の次でいい。そのことを再確認した。

高校野球「裏」ビジネス (ちくま新書 711)
筑摩書房刊
ISBN:978-4-480-06407-3

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